【書評】考えないヒント|小山薫堂式アイデア発想法を学ぶ。感心と同時に少しジェラシーを感じるかもしれない。

書評

考えないヒントという本がある。

放送作家の小山薫堂氏が執筆したもので、サブタイトルは「アイデアはこうして生まれる」とあり、自身のアイデア発想法について書かれた本だ。

実際にはアイデアを出せるようにするための習慣や心がけと言った方が近いが、メディア関係者以外でも参考にできる点があり、改善活動という視点では経営工学とも共通点があった。

読めばくまモンを生み出せるかも!?

どんな本?

小山薫堂氏が、仕事や人生においてアイデアを出すために自身をアイデア体質にするべく、実践していることや心がけていることをまとめた本。

希代のヒットメーカーのアイデア発想法

著者は「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「おくりびと」など多くのヒット作・有名作を手掛けてきた。

群雄割拠のメディア業界で長期に渡って活躍しており、そのアイデア発想法を教えてくれるというのだから聞かない手はない。

そもそも考えないヒントというタイトルにもやられた気がする。

本書で著者は、最良のアイデアはそれぞれの中に眠っているとし、考えるテクニックを使うのではなく、自身をアイデア体質に変えていくことでアイデアを出していこうと提案している。

アイデア体質になるには

では、アイデア体質になるにはどうすればよいか

本書にはアイデア体質になるために著者が考えてきたことや実践してきたこと、及びその実例が多く記載されている。

端的には下記の3点がポイントだと思う。

  • 偶然力を鍛える
  • アイデアの種を見つける
  • 欲張りになる

1の偶然力は、何度も登場するキーワードだ。

著者の造語だと思うが、偶然の力を信じてそれを見逃さずにつなげていくことで面白いアイデアを構築してく力という意味で合っていると思う。

仕事や生活で正のスパイラルを起こしていくイメージだ。

確かに身の回りで起きることを、そういうイメージで観察すると見え方が違ってくるかもしれない。

著者は自身の偶然力により、京都旅行をワインの金平糖をプロデュースに繋げたり、ワインの金平糖の縁で化粧品会社のCMを手掛けたりしたそうだ。

2のアイデアの種は、アイデアを生み出すポイントとして分かりやすいだろう。

何か気づいたこと・学んだことを、アイデアの種だと認識してから心のポケットに入れておく。

それが前述の偶然力と化学反応すればアイデアになるとある。

なるほどなと感じたと同時に思い出したのが、AKB48の恋するフォーチュンクッキーだ。

作詞はもちろん秋元康氏で、フォーチュンクッキーというものがあると昔に聞いていたことが種となり作品にしたとインタビューで語っていた。

何かを生み出す人は同じような感覚を持っているのかもしれない。

3の欲張りは、より根本的なポイントだ。

そもそも欲がなければアイデアを生み出そうとしないからだ。

著者は日常を面白くしたいという欲望が強いと自己分析しており、それがクリエイターとしての適性に繋がっているのだろう。

欽ちゃんこと萩本欽一氏は「番組のスタッフの過程は不幸じゃなきゃいけない」とか「幸せなヤツはダメだ」とか言っていたらしい。

満たされるとダメだという意味で言いたいことは伝わってくるが、当事者じゃなくてよかったなとは思う。

小山薫堂と改善活動

また、アイデア体質になるトレーニングとして勝手にテコ入れトレーニングを紹介している。

勝手にテコ入れトレーニングとは、著者が日々実践しているという、目に入るあらゆるものに勝手にテコ入れ(改善策を考える)をしていくものだ。

レストランのメニューやらテレビのCMやら、常に改善策を考えているらしい。

すごいなーと感心すると同時に、製造業の生産現場で唱えられる「改善に終わりなし」という言葉が浮かんだ。

勝手にテコ入れトレーニングの要領で日々生産現場を見ていると、常に改善策を作ろうとするので効率化は進んでいくだろう。

作業及びその管理だけでも日々大変なので、欲が出てくるようなインセンティブが必要だろうけど。

アイデアを話してもらえる人になる

この人に話したらやっかいだな。

そう思われたらお終いだと思いながら日々を過ごしている。

いいことでも悪いことでも話してしまったら、確実によくない方向に持っていく人はいるし、そんな人には情報を伝えたくない。

著者もアイデアを話してもらえるひとになることは重要だとしているが、その実例がくまモンだと思う。

著者はくまモンの生みの親として認識されているが、デザイン自体をしたわけではなく、熊本県のプロジェクトに関わってる際にデザイナーからくまモンを提案されて採用し、ここまでのキャラクターに育つ仕組み(熊本関連企業は使用料無料etc.)を作った。

著者がアイデアを話してもらえる人ではなかったらデザイナーもプラスアルファで提案はしなかっただろうし、現場の雰囲気をよくなるように心がけていたのだろう。

超個人的感想

本書は著者が2006年に42歳の時点で執筆しており、2022年にほぼ同年代である自分とは経験の幅に差があり、単純にうらやましいと感じてしまった。

職種の違いと言ってしまえばそれきりだが関わっている仕事の範囲が広いし、高級寿司屋やポルシェにも今のところ自分には縁がない。

この本で違う世界を覗けたことはよいことだったので、少しずつ関わる世界を増やしていきたいと感じている。

また、著者は当時、家を考えるサイト「イエラボ」を主宰しており、テーマ曲である岡本真夜さんの「君へ帰ろう」は好きな曲だったのはよい思い出だ。

先日(2022年10月27日)の浜離宮朝日ホールでのライブでは歌われなかったな。。

手紙」もなかったけど、弾き語りの「サヨナラ」が聞けたからいいか。。。

まとめ

小山薫堂氏のアイデア発想に関する本。

全てを実践は絶対難しいが、読者が自分の生活が楽しくする欲を持って少しずつ実践していくことで役立つ本になると思う。

偶然やアイデアの連鎖を起こすようにしており、スティーブ・ジョブスの「Connecting the dots」に通じるものもあった。

おまけ:活かせるポイント

本文では書けなかったが、この本には活かしたいポイントがたくさんあったので列挙してみる。

気になった人は読んでみよう!

  • それは誰をどう幸せにするかを問う
  • 自分がストーリーの中にいると面白さにきづかないので第三者の視点が必要
  • 企画書では表紙の次に「かましの一行」
  • うまくいっているように見せる
  • 当たり前をリセットしてみる
  • いい人に出会い、その人が自分にとって大事な人と気づく
  • プライオリティは常に入れ替わる
  • 今、目の前にあることは全て未来への貯金と思い、一つひとつを大切にしていく
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