子育てに正解はないとはいうけれど、答えを求めてしまうのは親の常。
ある日、本屋を散策していたら面白そうな本を見つけた。
タイトルは「山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る」である。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授が、同級生で小児脳科学者である成田氏と対談形式で育児について語っているらしい。
本サイトのメインテーマである経営工学には人事労務管理も入っているし、子育てだって“身近な”経営工学と言えなくもない。
表紙に書いてある「くじけない、折れない、しぶといメンタルを作るにはどうしたらいい?」なんて自分が欲しいくらいだ。
読んでみて感じたのは「基本が大事」「誰だって悩んでる」という当たり前のことだった。
どんな本?
iPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中氏と、大学で同級生だった小児脳科学者の成田氏による、子育てに関する対談をまとめた本。自身がどのように育ったか、子供をどのように育てたか、子育てに大切なことを何かについて意見が交わされている。
レジリエンスと感謝
神戸大学医学部で同級生だった山中氏と成田氏が、当時の思い出話も交えながら子育てをテーマに対談する内容だ。
それぞれの分野で活躍し、お互いに尊敬しあっている両氏による対談なので、話の中から気づきを得ていることも多く、上質な対談形式の講演を目の当たりにしているような気分になる。
印象的だったのは、レジリエンスに関する箇所だ。
レジリエンスとは困難を乗り越える力のことだ。
レジリエンスは、自己肯定感・社会性・ソーシャルサポートの3つの要素で向上させられることが最近の研究により分かったそうだ。
- 自己肯定感:ありのままの自分を肯定する力
- 社会性:周りの人と関係性を上手く保つ力
- ソーシャルサポート:周りの人に助けられていることを実感する力
当初、自己肯定感と社会性が要素として入っているのは何となく理解できたが、ソーシャルサポートに関してはピンとこなかった。
しかし、この本を読んで1週間ほど過ごしてみて、ソーシャルサポートを持つことより周りに感謝の念を持つことができるし、支えてくれている人達のためにも頑張ろうという気持ちになれることなのかと思うようになってきた。
感謝は大切にしないといけないし、人間関係の基本だとも思う。
早寝早起き朝ごはん
もう一つ基本が大事と思ったのは、両氏が早寝早起き朝ごはんを推奨していることだ。
脳を動かすためには酸素とブドウ糖とアミノ酸が必要で、ブドウ糖とアミノ酸は食事から摂取が必須のため、午前中に脳を働かせるには朝ごはんが必須だ。
また、起床時に食欲中枢を刺激するためにはセロトニンという脳内物質が重要で、セロトニンは早寝早起きした方が多く分泌される。
セロトニンを産み出すためにも脳が働かなくてはならないので、「食べるから脳が働く⇔脳が働くから食べられる」という関係が重要らしい。
朝日を浴びてもセロトニンが分泌されやすくなるそうだし、朝早く起きてご飯食べて活動するように人間はできているんだなと思う。
山中教授にも辛い時期が
山中教授が語る自身の経歴も興味深かった。
若くしてノーベル賞を受賞し順風満帆の人生を送っているのか思っていたが、若い頃は研究テーマがなかなか定まらず、米国留学から帰国した際は周囲の理解を得ることができずに鬱のような状態になったこともあるという。
そのような状態から色々な人からの助言・サポートを受けて乗り越えてきたことを知り、乗り越える力であるレジリエンスを身に着けていたんだと感じた。
そして現在も後進の教育などで悩んでいるとのことで、悩みがあるのは皆一緒だと当たり前のことに気づくことができた。
苦労したことが強みになる
また、成田氏は自身がADHD(注意欠如・多動症)だったのではないかと認識しており、幼少時からの苦労した経験が現在の仕事で非常に役立っているそうだ。
最近はADHDという言葉が一般的になり、子供の教育も少しずつ多様性を意識したものになっているようだが、昔はそのような概念がなく大変だっただろうなと思う。
成田氏のような医師に巡り合えると子供も親も安心できるだろうな。
まとめ
本書は子育てを考えるのにいい機会にもなるし、よりよい社会を作るにはどうするか、自分自身をどう育てるかという視点でも役に立つと思う。
子育てをしている人はもちろん、生活リズムを整えてより健康的な生活をしたい人にもお勧めだ。
身近で活用できるポイント
- ほったらかしが子供を伸ばす
- ええかっこしいを止める
- 一貫性なんてなくていい
- 子育てに正解はない
- 子供を信じる